2021年のキーワードの一つでDX(デジタルトランスフォーメーション)が挙げられるかと思いますが、そのDX推進の現場を例に今回はお話をしたいと思います。
例えば「生産性向上と残業時間削減のために業務管理ソフトを導入した」という例。
よく聞くフレーズですが、実際にこれで生産性が改善されないこともよくあります。
その理由や問題は様々ですが、今回はそもそも「業務管理ソフトを導入した」という解決策が間違っているケースのことを話したいと思います。
解決すべき問題点は何なのか?
まず、最初に注意したいのは「何もしないと変わらないから何かをしよう」という発想が挙げられます。
もちろん、何もしないよりはマシかもしれませんが、何かをするには必ず労力や時間そしてお金が掛かります。
それだけのコストを掛けるのだから、改善があって初めて成功と言えますが、ここで最初に大事なことを考えなければいけません。
それは何だと思いますか?
「何をするか?を決めること」それも確かにそうですが、その前に考えることがあります。
「解決すべき問題点が何か?」もう少し具体的に言うと「問題点をどうすることなのか?」を具体的に決めることです。
この場合「残業時間を減らす」などでは足りなくて、例えば「半年以内に、月の残業時間が60時間超えている人の残業時間を40時間以内にする」とか「今期中に全従業員の平均残業時間を40時間から25時間に減らす」など、期限、対象者、度合いなどを決めなければそもそも対策がブレてしまいます。
前者は特定の残業時間の多い従業員に固有の問題点を解消することですし、後者は多くの場合は全体を少しずつ下げることが必要です。
そして、手の付けやすさや効果の出やすさも前者→後者の順であることが多いので、仮に両方が問題点だとしても解決策は別々に考え、優先順位を付けて着手する必要があることも付け加えておきます。
なぜその解決策は問題を解決しないのか?
特定の人の残業時間が問題になっているとして、果たして全体の業務改善のための業務管理ソフト導入を行えば、その問題は解決するのでしょうか?
みなさんの会社でも業務が集中している・生産性が低い社員などで飛びぬけて残業時間が多い人はいるのではないでしょうか。
その人の作業内容、業務レベル、スピード、そして現状の課題をイメージして、業務管理ソフトを導入したら解消すると思いますか?
答えは多くの場合でNoだと思います。
業務管理ソフトを否定する気はなく、それらは多くの場合で、全体の業務の見える化や平準化、オートメーション化などには寄与すると思いますので、先の問題の後者(全体の残業時間を少しずつ減らす)方では意味のある対策として挙げられると思いますし、今回問題になっている長時間残業の従業員に対しても多少の効果はあるでしょう。
つまり、問題点をより効果的に改善するためには、「問題点を明確に(具体的に)特定すること」と「それを改善できる改善策を具体的に策定すること」が必要です。
何かをすれば何かが変わるのはもちろんですが、その「変わる」ものは「問題点」である必要があるので、「この方法はこの『具体化した』問題点を解決するか?」という視点で考えなければいけません。
この視点が十分でないとせっかくの取組の効果が薄れてしまいます。
この「問題の特定化」「その問題を具体的に解決する方法の立案」の重要性や難しさは色んなお客様の支援をしていく中でよく感じることなので、視点がズレないように私どももご支援の際は十分に注意しています。