この記事の背景
ここ最近、「これは節税になりますか?」と聞かれて「課税を繰り延べているだけだな…」と思う話がたまたま数件あったので、ここで私なりの考えを整理してお伝えしようと思ったことがきっかけです。
「節税」か「繰延」か
「これは節税になります」と言われるもので、「数年(または数十年)後にその分利益となるため、トータルでみたら節税になっていない」ものが、いわゆる節税方法の中には存在します。
例えば、1~5年目に毎年100万円支払って節税できるが、6年目に500万円の利益が発生するようなものですね。
この記事においては、「税金を減額する効果だけを有するもの」を「節税」、「一時的には税金を減額したとしても、総合的に見ると税金を減額しないもの」を「繰延」と呼称します。
課税の繰り延べはどうやったら起こる・できるのか?
課税の繰り延べとは、文字通り税金の支払いを将来に先送りする方法です。
一般的にイメージしやすいもので言うと、「法人が加入する養老保険」「倒産防止共済」「(航空機などの)オペレーティングリース」などが多いのではないでしょうか?
他では「補助金・助成金を使って投資をすると、投資した年度は支出だけ出るので節税になる」というようなものもありました。
確かに、これらを支出すると当期の利益を圧縮し、一時的に課税所得を減らすことができます。
ただし、重要なのは、これらは「課税の繰り延べているだけで、節税ではない」という点です。
将来的には繰り延べた分の課税が発生するため、最終的に支払う税額は変わりません。
繰り延べのメリットと活用できるケース
課税の繰り延べが有効となるのは、特定の状況に限られます。たとえば以下のようなケースです:
- 利益を一時的に圧縮したい場合
たまたま当期に予想外の利益が出て、それを一時的に圧縮したい場合は課税の繰り延べを利用することでその期の利益を圧縮することは可能です。(ただし、繰り延べた利益を受け入れる期の出口戦略があることが前提ですが) - 赤字を回避したい場合
銀行融資との兼ね合いで最終利益の黒字を維持する必要がある場合などは活用することで営業利益が赤字の年度であっても最終利益を黒字化させる効果はあります。
これらの状況では、課税の繰り延べが一つの有効な手段となり得ます。
当事務所のスタンス
私たちは「課税の繰り延べは節税にはならない」という考えを基本にしています。
そのため、節税を目的とした利用はお勧めしていません。
また、短期的にキャッシュが著しく減少するものもありますし、トータルで見た際にキャッシュが減少するものもあります(トータルで500万円払って、400万円返ってくるなど)。
対して、一時的な利益圧縮や黒字の維持といった特定のニーズがあり、それに対して課税の繰り延べをすることが有効だと考えられる場合には、適切に活用できる方法をご提案する場合もございます。
大事なのは、課税の繰り延べも節税も「手段」でしかないので、中長期的な会社の方針などを考えた際に、その打ち手として「課税の繰り延べ」という方法が沿うか?をきちんと考えることだと思っています。
私たちは中小企業が持続的に成長するための支援に力を入れておりますので、まずは中長期的な方針を検討した上で、その打ち手を一緒に考えられたらと思っています。